隼人と古墳壁画2023/05/28

隼人の研究といえば、鹿児島の中村明蔵さんだ。

1999年2月から南日本新聞に「日向神話の誕生と再生」を連載されたが、そのスクラップがいまだに手元にある。

本も2、3冊は購入したが、どうも中村さんの文章が私には合わないようで、最後まで読みとおしたことがない。
新聞連載も途中で読まなくなり、スクラップは82回で終わっている。

しかし今回、国会図書館デジタルコレクションで中村さんの『隼人の楯』(学生社、1978年)という本を見つけ、大変面白い発見をした。

最終章「楯の謎は解明されたか」で、装飾古墳に言及しているのだ。

まず、連続三角文について。
石室が竪穴式から横穴式に変わって人の出入りが容易になったため、「石室内の各所に連続三角文が描かれ、死者へ接近するものを攘斥(じょうせき)しようとしたのであろう」という。
楯も外敵から身を守る用途から、連続三角文の「呪力」に期待したものであり、「とりわけ隼人の楯の場合は、上下にそれぞれ二重につけられたその文様が鋭い歯先をもってかみ合わされるように描かれ、いっそう外敵に脅威を与えるものとなっている」。

さらに鹿児島の民俗的事例を挙げ、トカラ列島の悪石島では神社の鳥居に三角文(鋸歯文)が描かれており、明らかに聖域を示していること、また、同島の仮面神「ボゼ」の歯や口をも連想させるとしているのが面白い(写真は鹿児島県歴史資料センター黎明館の仮面神の展示。ド迫力なので是非とも実物を見てほしい)。

次に、隼人の楯の中央に描かれた逆S字形については、装飾古墳の渦巻文を参考にして考えている。

渦巻文を描いた装飾古墳が多いのは福島県だということで、ここは日下八光氏の『東国の装飾古墳』にカラーグラビアがあったのでよく分かった。

清戸迫横穴の壁画では、大きな渦巻文と武人らしき人物がつながっている。
これは「渦巻文の呪力は人物に感染するものであり、それによって武人はすぐれた武勇を身につけることができるという思想がそこにはみられる」という。

ここで再度、写真を見てみると、大きな耳に渦巻文を持つ仮面神がいて、確かに大きな呪術的なパワーを感じさせる。

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