自分史の手引き(1)2011/03/08

 自分史をどう書けばいいのか。
 それを考える上で参考になるものに自伝があります。
 その中でも古典として名高い、福沢諭吉の『福翁自伝』(岩波文庫)を見てみましょう。
 構成は次のようになっています。

幼少の時
長崎遊学
大阪修業
緒方の塾風
大阪を去って江戸に行く
初めてアメリカに渡る
ヨーロッパ各国に行く
攘夷論
再度米国行
王政維新
暗殺の心配
雑記
一身一家経済の由来
品行家風
老余の半生

 どうでしょう。自分の幼少期から語り起こし、時間の経過どおりに記していく。何も難しく考えることはありません。非常にオーソドックスです。ちなみに福沢諭吉は自分の故郷、大分・中津について「どこに行ってどんな苦労をしてもいいから、とにかくこの中津から出て行きたい」とそればかり願っていた、なんて書いていて、どきりとします。もっとも現代の中津人の名誉のために付け加えれば、福沢は当時の封建的な門閥制度に我慢がならなかったのです。ただただハッピーな自分史もいいでしょうが、もしそれを少しでも後世への問題提起にしたいのであれば、ときにはこういう手厳しい指摘も必要かもしれません。
 ひととおり自分の生涯について語り終えたあとは、そこに漏れたが捨てるには忍びないエピソードを「雑記」としてまとめ、また、自分の考えをまとめたところなど、参考になりそうです。
 もう一つ、これも名作として知られる宮本常一の『民俗学の旅』(講談社学術文庫)はさらに構成がわかりやすい。目次を見てみましょう。

1 家の歴史
2 祖父
3 父
4 母
5 私にとってのふるさと
6 郵便局員時代
7 小学校教員時代
8 柳田、渋沢、沢田先生に会う
9 アチック・ミューゼアムに入る
10 民俗調査の旅
11 戦時中の食料対策
12 戦後の農漁村をあるく
13 山村と離島
14 学位をもらう
15 日本一長い食客
16 雑文稼業
17 若い人たち・未来

 これはとても参考になりそうですね。

卒業が確定2011/03/08

わが京都造形芸術大学から卒業が確定したとの通知が来た。
3年に編入して、最短2年での卒業。

通信教育部だから、家での地道な勉強によるテキスト科目と、
あとはスクーリングに年6回の計12回行った(うち3回は東京キャンパス)。
思うほど楽しいもんじゃない。

夫婦や友人知人と誘い合って入学し、ワイワイなごやかにやっている地元の人たちを横目に、九州から1人で通うオジサンは孤独だった。
「遊びに来てるんじゃない」元を取ろうとがっついて授業中に質問しまくったから敬遠されていたかも。

授業内容は良かった。それより何より、
やっぱり大学の先生というのは、いい本を知っているということ。
いい本というのは世の中にごまんと眠っているのだが、
意外と出会うのは難しい。それだけでも価値があった。

文芸コース「一期生」という名誉に浴したが、
その分、まだ科目が充実していなかったのが残念だった。
なにしろ1年目は半分が未開講だった。
だから文芸科目だけじゃ足りないので、美術系科目をたくさん取った。
でも、けがの功名で美術に詳しくなったのはよかったかもしれない。

今年からは科目内容も充実してきて、
後輩がうらやましいが、のんびり留年してる余裕はない。
「卒業からが本番」。その言葉を噛みしめている。