柳田国男は戦争でぶれなかった2018/10/08

梅原猛『海人と天皇』に、高取正男の『神道の成立』が名著だとあったので、それを読み、今度は『神道の成立』に柳田国男の『先祖の話』が出ていたので、本棚を見たら、『先祖の話』が未読のままにあった。

読んでみたら、これが素晴らしかった。
もう一度、味読したいと思っているが、とりあえず、取り上げて引用したい部分がある。

自序によると、昭和20年10月22日に『先祖の話』は書かれている。

まさに敗戦直後の混乱期である。
価値観が百八十度引っくり返ったと聞く。
ところが、柳田国男に全くブレはない。

力説したいことは、この曠古の大時局に当面して、目ざましく発露した国民の精神力、ことに生死を超越した殉国の至情には、種子とか特質とかの根本的なるもの以外に、これを年久しく培い育てて来た社会制、わけても常民の常識と名づくべきものが、隠れて大きな働きをしているのだということである。

信仰はただ個人の感得するものではなくて、むしろ多数の共同の事実だったということを、今度の戦ほど痛切に証明したことはかつてなかった。

9月28日付で梅原猛の「敗戦によって国家主義は崩壊し、また西欧主義が復活した」という言葉を紹介したが、柳田国男はどちらでもない。地に足の着いた愛国者というべきか。

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