太宰治をなぜ書いたか2011/10/28

聞くところによると、日本文学の中で、太宰治は夏目漱石に次いで、累計2300万部売れているのだという。

こうなると、もう、ひとつの権威だ。
「ダザイって、そんなに面白いかな~?」なんてことも言えなくなってしまう。
そんなこと言ったら、「こいつ、文学なんて何にも分からん奴だ」と冷たい目で見られそうだ。

なにせ高橋源一郎なんて、太宰の作品を全部読んでマネしろ!と言っているくらいだ(『一億三千万人のための小説教室』岩波新書)。

だからこそ、1人くらい、「太宰治って面白くないよ~」と言ってもいいんじゃないか、と思って書いたのがこの『「花のいのち」殺人事件』だ。

タブーに挑戦。志は高いのだ(エヘン)。
だから、
世の太宰ファンから総スカン、は覚悟している。

でも、けっこう共鳴してくれる人も実はいるんじゃないかと思う。
隠れアンチ太宰の人たちが。

実際、私の亡くなった母は「太宰治は読んじゃいけないよ」と言っていたし、
私自身、高校の国語の教科書で「畜犬談」を読んだときに、
「ひえ~!! なんじゃこりゃあ」と嫌悪感がMAXに。

それは、道の向こうからやってくる犬が怖い。
自分を噛みそうで怖い。だから、目を合わさないようにする。
知らない振りをする。はたまた、こびへつらって笑みを浮かべる…。

そんなつまらない、ネガティブな感情をこれでもか、これでもか、と。
こんなこと、自分の中でだけで思ってればいいんじゃない。
人を巻き込むな!

こんな下らないものを〝文学〟と思われては、
世の作家たちが気の毒だ。
これで文学嫌いになった人もいるだろう。
そうなると日本の文学界にとって大変な損失だ。

でも、今回太宰治を書くにあたって、
やはり読まずに書くわけにはいかない。
それで代表作はあらためて読んでみた。

やっぱり、つらかった。
苦痛だった。

そんなわけで、
日本で2番目に売れてる作家のファンを
全部敵に回してしまったかもしれない。

あ、もちろん、小説ですから、
そんな自分の気持ちは隠し味にして面白く書いてるつもりです。