存在しないはずの左翼という亡霊2017/08/27

もう、新社屋しか知らない若い社員も増えてきているだろう。
彼らは不便も不便と思わないかもしれない。
しかし、誰かがこのトンデモナイ移転劇を書き残さねばならない。
他に誰かが書いてくれれば私が書くことはなかった。
私家版ではあるが、書き残すことができてほっとしている。
南日本新聞には健全な保守になってほしい。そして日本一の地方紙になってほしいのだ。

易居町の社屋は8・6水害でも浸からなかった。住民や、いわゆる帰宅難民が避難してきたほどだ。危機管理上、すぐれた場所だった。
何も急ぐ必要はなかった。というのも、「最良の選択である」隣接地の鹿児島税務署の土地を取得交渉中だったからだ。税務署側も移転を計画していた。
実際、皮肉なことに平成十三年(二〇〇一)、南日本新聞社と同じ年に移転している。

ところが、突然、与次郎ケ浜に変更された。誰の頭の中にもなかった土地である。そして、誰もが嘲笑う土地である。
実に不透明だ。あまりに拙速なのだ。

目高社長は前月の八月に次期経営三カ年計画で初めて、移転を選択肢に入れた新社屋建設の考えを発表したばかり。
そこには「隣接地(つまり鹿児島税務署)を含めた現在地か新県庁近隣にしぼって検討する」とあったにもかかわらず、移転そのものも場所も何のコンセンサスも得ることなく、九月には与次郎一丁目の用地取得交渉に入ったのだ。

役員会によると「結論が出てから用地を物色しても、適地を取得できる可能性は薄い。他にさらなる適地が見つかれば、交換することも可能。どこか一カ所でも候補地を確保していないことには、先へ進まない」と苦しい言い訳をしたが、引っ張りだこの土地ではないのだ。むしろ売れ残っていた土地だ。新県庁にも大して近くない。
換地にするにしては高い。三十一億円以上。のちに買い足した分を入れると四十五億円以上。

一号用地(谷山二丁目)に購入し、遊ばせていた土地に仮社屋を建てて、税務署の土地には手付けを打って確保しておき、同署の移転とともに社屋を建て替えればよかった。誰が考えても妥当な案である。

初めに与次郎ありき。
何らかの理由で与次郎のガンタレ土地を購入しなければならない理由があったのではないか。購入相手はパチンコの第五富士。
与次郎移転以来、南日本は失敗を取り繕うために金をドブに流し続けている。
そして誰も責任を取らない。批判もしない。


 一九八三年、島田雅彦が『優しいサヨクのための嬉遊曲』を書いたころ、左翼という言葉自体がもう、風前の灯だった。「左翼」は「サヨク」となり、やがて死語になる……そんな時代の流れだった。

 その後八九年のベルリンの壁崩壊、九一年のソ連邦崩壊で、イデオロギーの時代はついに終わった。我々は一つの大国がなくなるという稀有の事態を目撃した。共産主義・社会主義陣営は完全に敗北した。人を右、左で分ける時代は終わったのだ。
 すると、レーゾン・デートル(存在意義)を失った反体制派の言論人、文化人、政治家たちはどうしたか。

 一九九二―九三年の政治漫画、弘兼憲史『加治隆介の議』(講談社漫画文庫)第二巻三三九頁に、次のような与党の先輩政治家と主人公との会話がある。

「社会主義というイデオロギーが崩壊してからは与野党間の明確な対立軸がなくなった。しかし、なくなったとはいえ、野党――特に社会平和党の古手はコチコチの左派だ。頭がカタイというより今ここで自分達の姿勢をくずすと今までの自分の全人生を否定することになる。それが怖いんだ」
「その通りだと思います」
「イデオロギーがなくなっても依然として社会平和党の左派とは対立する軸が何本か残っている。何かわかるか?」
「まず護憲か改憲かという自衛隊のあり方を問う問題……それから対韓国問題、原子力発電の是非、消費税……あと今後の日本の外交上の姿勢でアメリカ重視型かそれともアジア外交を中心にするのかといったところも対立軸でしょうか」

 加治隆介は鹿児島の政治家。鹿児島の人にはぜひ読んでほしい漫画だ。
 この会話が描かれてから二十三年以上。
 対立軸は大して変わっていない。左派は新たな拠り所を見いだせていないのだ。
 その代わり、尖鋭化させている。

 日下公人編『誰も書かなかった「反日」地方紙の正体』(平成二十三年、産経新聞出版)という本がある。
 三百ページ強の本は冒頭、八木秀次(高崎経済大教授)と南日本新聞記者とのエピソードから始まる。
 八木氏は記者を名指しして「まんまと騙された」とまで書く。

 文脈が分かりにくい点もあるが、要するに学校現場における男女同室着替えについて、話してもいないことを新聞のコラムに書かれたと批判している。その結果、記事を全国のフェミニストたちに利用された。南日本の記者を「ジェンダーフリーというマルクス主義フェミニズムの信奉者」だと極めつけている。

 このT記者はよく知っている。ひと回り以上は下だから、40代後半だ。
 氏が言っていることが本当なら困ったことである。私もフェミニズムをかねがね疑問に思っているからだ。

ジェンダーフリー。フェミニズム。
フェミニストは大学に深く根を張っている。

私は退職後、京都造形芸術大学の文芸コースに学んだが、創作に「女の子」と書いてたしなめられ、仰天した。
そんな言い草は聞いたこともなかったからだ。

テレビはオカマやフェミニスト、進歩的文化人という名の反日左派評論家・ジャーナリストに乗っ取られている。
いわば公序良俗の破壊者だらけだ。こんな国は世界にないのではないか。エジプト人の女性タレントが、日本は女尊男卑だと批判しているのも無理はない。
テレビ局は日本をどこに導こうとしているのか、全く無責任だ。

知人から「南」の主張はひどい、といわれることも増えてきた。
非常に単純化していうと、南日本新聞しか読まない人がほとんどだった(購読率90%)ので、これまで鹿児島の言論は南日本新聞がほぼ唯一絶対だった。
だから先に挙げた九五年のような紙面を読まされても、苦情は出なかった。

読者は、南日本に書いてあることはすべて正しいと信じ込んでいた(交通事故の取り扱いに疑いを持つ人がいる程度のこと)が、ネット時代になっていろんな言論が簡単に手に入るようになった。
どうも南日本の主張は偏っている。極端すぎるというのだ。

南日本新聞は共同通信の出稿メモと、七時のNHKニュースのラインアップで新聞を作っている。
さらに驚くべきことに整理記者の端末はインターネットと繋がっているため朝日新聞の見出しが見られる。

私が編集部デスクになりたての頃、部員に見出しを注意すると、「朝日はそうしてますよ」と言い返されて絶句した。
制作から移ってきて記者経験のない男だったが(そこにはまた別の問題がある)、目の前にある原稿ではなくてネット情報を信じる。
原稿に書かれていないことは見出しに取れない大原則を知らないのだ。

南日本の記者には本当の極左の活動家もいた。
団塊世代の退場と共にいなくなるかと思っていたが、T記者のような下の世代にも根強く生き残っている。

この世から消え去ろうとしていた左派は、新たな拠り所、中国韓国あるいは沖縄の「反日」に目を向けた。
これを焚きつけて国民に罪悪感を植え付け、取り返しのつかないところまで煽って世界に向けて炎上させた。一方では、フェミニズムで公序良俗を破壊しようとしている。

「反日」とはすなわち日本の弱体化に他ならない。「戦争防止法案」を「戦争法案」と呼んで日本を無防備にする。フェミニズムで日本人の健全な人格形成まで妨げている。

 こうした人たちをネット上では「左翼」と指弾するようになり、この古臭い言葉が復権した。逆に、中韓両国やマスコミを憎悪し罵る人々は「ネット右翼」と呼ばれるようになった。二十一世紀に左右対立などという古臭い亡霊が復活するとは!

 二〇一六参院選そして都知事選以降、国益か反日か、決着をつける激しい戦いの火蓋は切られている。
 憲法九条改正のカウントダウンは始まった。時代は大きな転換期に入ろうとしている。
 少なくとも設立後六十年以上たつ自衛隊を合憲にしないとおかしいではないか。転換期というより国家正常化のときだ。
 右か左かではない。もう「左」など存在しないのだ。人を分けるのは、反日か愛国か、だ。
 南日本新聞も旗幟を鮮明にする時が来ている。どうせ、模様眺め、横並びを決め込んでいるのだろうが。

共同通信を出ても青山繁晴氏のように左に偏らない人もいる。
「右でも左でもない、真っ直ぐなんです」
たったひとつの日本で分かれて争うことを克服し、これまでの利権も私利私欲もみな超えて、ジャパンオリジナルの民主主義の国造りを一緒にやりましょう――。

21日から30回にわたり続けてきた連載「もう一度、餃子楼のカツ丼が食べたい」は、易居町1番2号への未練を、名山町にあった餃子楼の〝日本一のカツ丼〟に託した惜別だ。

易居町1番2号の旧社屋は鹿児島市の「SOHOかごしま」のビルになっている。ここに事務所を借り、南日本新聞を創業の地に戻す運動をやりたいとさえ思う。

〝南日本新聞の9・11〟強引な与次郎移転は絶対に許せない。

しかし今、最も心配なのは南日本新聞の論調である。

維新の地、鹿児島らしい、健全な保守主義を掲げよ!!

今後も勝手に監視し、紙面審査させてもらう。

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