スサノオの剣2023/02/06

昨日、福津市の新原・奴山古墳群と、その出土物を展示しているカメリアステージ歴史資料館に行ってきた。
どちらも素晴らしかった。

何から書いていいか分からないくらいだが、日本書紀をぱらぱらしていたら「十握(とつか)の剣」が出てきて、資料館の展示を思い出した。

説明文を見てほしい。

「鉄剣・鉄刀は全長が80cm前後あり、日本書紀の記述にある十握の剣に相当し、宗像君の権威の大きさを表す遺物である」

80cmすなわち十回握った分の長さということだ。

十握の剣は、素戔嗚尊(以下、スサノオ)の剣である。

国生み・神生みの伊弉諾尊(イザナギ)は妻イザナミを亡くした後、3人の子に対して、天照大神は高天原を、月読は青海原の潮流を、スサノオは天下を治めなさいと命じる。

ところがスサノオは泣いてばかりで天下を治めようとしない。

イザナギが理由を尋ねると、スサノオは「私は亡き母について根の国(あの世)に行きたいと思ってただ泣くのです」と答える。母思いで泣かせる。

イザナギが望み通りにしなさいと言うので、スサノオは高天原に行って姉に別れをしたいと言って許される。

天照大神はスサノオが高天原を奪いに来たと疑う。

ここで有名な「誓約」の場面となる。
スサノオは「もし私の生んだのが女だったら、汚い心があると思って下さい。もし男だったら清い心であるとして下さい」と言う。

そこで天照大神がスサノオの十握の剣を三つに折って噛んで吹くと、三柱の女神になった。
次にスサノオが天照大神の勾玉の首飾りを噛んで吹き出すと、五柱の男神となった。

天照大神は「十握の剣はスサノオのものだから、三柱の女神は皆お前の子だ」と言って授けた。
これが筑紫の胸肩君(むなかたのきみ)らがまつる神である、と日本書紀は書く。

新原・奴山古墳群は、沖ノ島祭祀を担い、宗像三女神信仰を高めた豪族、宗像氏の墳墓群とされており、その新原奴山1号墳から十握の剣が出てきたというのは、ちょっと出来過ぎなほど筋の通った話である。

しかし、スサノオの子が女ということは誓約には敗れたことになる。

開き直ったのか、スサノオが高天原でとんでもない乱暴狼藉を働くのはご存じの通りである。

それで天照大神は天の岩屋に閉じこもり、世は闇となる。
神々はその問題を解決すると、スサノオを高天原から追放する。

その後いったんスサノオは新羅の国に行ったという話もある。
https://restart.asablo.jp/blog/2020/02/25/9217555

これで分かるように、神話といっても太古の時代でも何でもなく、すでに鉄剣などの金属器の時代に入っており、新羅(紀元前57年~)も成立しているという、少なくとも弥生時代中期の話なのである。だから決して絵空事ではない。
これは誰も言わない、重要な点である。

そしてスサノオは出雲の国へ降り立ち、奇稲田(くしいなだ)姫を八岐大蛇から救うと夫婦になり、生まれた子が大己貴神(おおあなむちのかみ)なのである。
これで前回にもつながった。

そのあとスサノオは根の国(あの世)に行く。

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