可愛い魚の象嵌2023/02/25

九州国立博物館の文化交流展示室に展示中の、群馬県から出土したと伝わる「象嵌鉄刀」である。

可愛い魚が象嵌【ある素材(=鉄)に異なる素材(=銀)をはめ込む工芸技法】してあるのが目を引いた。

展示室には何の説明もないが、九博のホームページには「象嵌は佩表2ヶ所と佩裏の関(まち)の目釘部分に各1ヶ所の計3ヶ所に見られる。刀身中央は切先に向かって左に魚、右にそれをついばむ鳥のような文様である。魚は鱗を表し鳥は尻尾をもった側面観である。関は目釘孔を中心に7個の突起を持つ星形文である」とある。

何やら仰々しい文章だが、要は、刀身に魚、鳥、星の3つの象嵌が施されているということだ。

これは刀の峯に75文字もの銘文が象嵌されていることで有名な、熊本の江田船山古墳の銀象嵌銘大刀の文様と共通する。

江田船山古墳の場合は、魚、鳥、馬、花の4つだ(昨年12月10日付を参照のこと)。
いずれも5~6世紀ということで共通する。

なお「目釘穴」については、「刀剣ワールド」というサイトの説明が分かりやすいので引用させてもらう。

刀身の中でも、「柄」(つか)に納まる部分を「茎」(なかご)と言います。
基本的に茎は、柄に開けた孔に挿し込んであるだけであるため、戦闘中に敵を切ったり、あるいは突いたりしたとき、刀身が抜けないように柄と茎に釘のような留め具を通して固定しました。
その留め具を「目釘」、そして柄と茎に開けられた孔が「目釘孔」(めくぎあな)と呼ばれているのです。
この目釘と目釘孔により、刀身を手入れするときなど、目釘を外すだけで簡単に柄から刀身を外すことを可能にしています。(以上、引用)

ところで、なぜ刀なのに関(まち)に目釘穴が開いているのか分からない。
剣なら「刃関双孔(はまちそうこう)」といって、関に二カ所の穴が開いて、鹿角製や木製の把装具を取り付けたらしいのだが…。