直弧文は日本にしかない2023/04/15

写真左は九州国立博物館で開かれた「加耶展」の展示物である。

コンパス円文施文埴輪(太宰府市の成屋形古墳、5世紀)で、説明には「渡来人がつくった埴輪」と断定している。

果たしてそうだろうか。

写真右は同じ5世紀につくられた、福岡県広川町の石人山古墳の有名な家形石棺である。
後円部の現地に保存してあり、見ることができる。
写真では分からないだろうが、実物は大変な迫力だった。

屋根の両側に5つの円文と直弧文(直線と弧からなる複雑な文様、日本でしか見られない)が描かれている。

円文というのは普遍的な図形のように思えるが、実は縄文・弥生時代には渦巻文が盛んで、円文はほとんど使われていない。

装飾古墳の模写で唯一無二と言っていい、日下八光氏は著書『装飾古墳』(1967年)で、円文についてこう書いている。

「この簡単で美しい文様が、古墳時代になって盛んに用いられていること、およびコンパスもこの時代になってはじめて用いられていることなどから、あるいはコンパスという新しい道具が考え出され、それを使用して描く直弧文や円文、同心円文は、当時の新しい図案として盛んに流行したのではないだろうか」

コンパス円文施文埴輪が「渡来人がつくった埴輪」であるかどうかは、もう少し慎重な検討が必要ではないだろうか。

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