「芙美子と戦争」から目を逸らさないで2020/10/14

『花に風 林芙美子の生涯』(海鳥社)は、15年前の2005年に書いた『林芙美子「花のいのち」の謎』(高城書房)を全面的に改訂したものだ。

2005年の旧版で一番分からなかったのが、芙美子の戦争中の活動だ。

戦争中の作品は全集や選集にもろくに入っていない。
実はたくさん書いているのだが、旧版執筆の時点で手に入ったのは『北岸部隊』(2002、中公文庫)くらいだった。
芙美子の戦時中の旺盛な執筆に対し、戦後、短絡的に「戦争協力者」という烙印が押されたためだ。
戦争中に書いた作品など読むにも研究にも値しないというわけだ。

このため、開高健の『ベトナム戦記』と『北岸部隊』とを比較し、戦闘シーンの描写の違いなどを考察してページを稼いだりした(笑)。

その後も、『戦線』(2006、中公文庫)、望月雅彦編著『林芙美子とボルネオ島』(2008、ヤシの実ブックス)が出たくらいで、芙美子研究から戦時中がすっぽり抜け落ちている状況はあまり変わらなかった。

しかし、近年、国会図書館のデジタルコレクションの充実で、林芙美子の昔の作品が簡単に読めるようになった。
芙美子の南京取材をもとにした『私の昆蟲記』などをもとに、昨年、『林芙美子が見た大東亜戦争』を上梓することができた。

一方、次作に尾崎ゾルゲ事件を核とした「朝日新聞と戦争と共産主義」をテーマに書こうと懸命に資料を読んでいた。

そんな中、北九州市立文学館に、戦争中、朝日新聞の記者が林芙美子宛てに書いた手紙がたくさん所蔵されていることを知り、これは全くこれまで誰も取り上げていなかったので、旧版の改訂に合わせて『花に風 林芙美子の生涯』にたっぷりと盛り込んだ。「朝日新聞と戦争と共産主義」の研究が役に立った。

林芙美子ファンでも、いわゆる自虐史観の影響で戦争のことを書くと嫌う人が多いようだ。
どうか目を逸らさないでほしい。あの戦争に学ぶことは多い。
昔の出来事じゃないのだ。今、日本はまさに危機だ。目を逸らしているだけでは平和は来ない。

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