ゾルゲの遺骨を北方領土に移すだと⁉2022/03/03

拙著『花に風』は副題にあるように作家・林芙美子の生涯を描いたものだが、実は最も書きたかったのは「朝日新聞と戦争と共産主義」というテーマである(帯にもそう書いた)。

林芙美子は戦争中、朝日新聞と仕事をすることが多かった。

そこから戦争中の朝日新聞についてどんどん調べていった。
私自身、新聞記者をしていたので関心がある。

するとどうしても尾崎秀実という存在に突き当たる。

朝日新聞記者だった尾崎は共産主義者としてソ連に忠誠心を抱き、ソ連赤軍のスパイであるリヒャルト・ゾルゲに忠実に従って、日本の国家最高機密情報を伝え続けた。

尾崎とゾルゲの最大の狙いは、日中戦争を終わらせないことと、いわゆる南進論へ日本を導くことだった。

日本が中国戦線や南方戦線に注力すれば、満州の守りは手薄になりソ連に有利になるからだ。
歴史はこの通りに進行し、日本がソ連に手痛い目に遭ったのはご存じの通りだ。

尾崎ゾルゲ事件は日本史上最大のスパイ事件であり、ともに死刑に処せられたのは当然だ。

ところが、尾崎著『愛情は降る星の如く』や岩波系文化人の木下順二作「オットーと呼ばれる日本人」によって、まるで尾崎が平和を願っていたかのような180度ひっくり返された人物像を信じる人もいる。

それについては朝日新聞で上司だった鈴木文四郎が、尾崎の実像を書いた文章がある。
『花に風』あとがきに引用したのでぜひ読んでほしい。

さて、表題のゾルゲの遺骨について。
一昨日の1日付産経新聞「斎藤勉のソ連崩壊と今」(1面と7面)によると、ロシアのプーチン大統領は赤軍スパイ、ゾルゲを英雄視しており、その遺骨を東京の多磨霊園から北方領土に移す計画が進んでいるというのだ。

日本はまたしても深刻な歴史戦にさらされようとしている。

日本人が尾崎は良い人だった、処刑した日本の国が悪いんだと考えるようなら、この歴史戦には勝てない。