縄文土器の文様解読①2022/11/20

装飾古墳の文様解読に当たって、先行する研究はないか調べていたら、縄文土器の文様解読の論文を見つけた。

縄文土器、銅鐸、装飾古墳、この三つの文様に興味がある。

縄文時代、弥生時代、古墳時代という日本の「無文字時代」にあって、実はこれらの文様が文字の役割をしていたのではないかと考えるからだ。

書いたのは東京の清瀬市郷土博物館の学芸員、内田祐治さんだ。
論文のタイトルは「中期縄文土器の文様構造─清瀬市域出土土器の文様解読─」。

ネットでPDFが公開されている。
45ページの力作だ。

難解な所もあるが、これだけ正面から縄文土器の文様解読に挑んだものは読んだことがなかったので実に面白く読んだ。
何より34もの土器の文様を具体的かつ詳細に分析しているのが素晴らしい。

二つだけ挙げる。

普通、絵は写実に始まり、抽象に向かうと考えられるが、縄文土器はそうではない。
「野生の思考(注=縄文人の思考)のなかには、具象から抽象化が起こされているのではなく、いわば関心のおもむくままの断片を集めたような抽象描写から、それらの概念を求める葛藤をへて、はじめて全体をとらえる具象描写できる感覚が呼び起こされてくる」

もう一つ、縄文土器の文様は四つの区画に分かれ、起承転結になっているとの指摘には感心した。

縄文土器の文様解読②連続三角文2022/11/20

縄文土器の文様と、装飾古墳の文様とで共通するのが連続三角文だ。

縄文土器では粘土紐で描かれ、装飾古墳では彩色(顔料)で描かれたという違いはあるが、よく似ている。

内田論文によると、連続する三角は「峰の連なり」であり、人域と霊域をへだてる結界の形を表わしているという。

そういえば、装飾古墳の多い筑後地方は、平野をぐるりと連山が囲んでいる。
複雑な文様の縄文土器の多い、長野や山梨、関東もそうだろう。

台地と錦江湾と桜島という、私の育った鹿児島の景色とはかなり違う。